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The Many Layers of Philippine Art

Philippine art has many faces — because its history runs in layers.

The Many Layers of Philippine Art

フィリピンのアートと聞くと、明るい色づかいや南国らしい風景を思い浮かべる人もいるかもしれません。

フィリピンアートの歴史を、「多層性」という視点からたどってみます。

フィリピンアートの根っこを知る入口として、まずアンゴノ・ペトログリフという壁画とマヌングルの壺を取り上げます。

アンゴノ・ペトログリフは、フィリピンでもっとも古い絵画表現とされる、新石器時代の岩壁画です。岩壁に、人物のような形が刻まれており、フィリピンに古くから視覚的な表現があったことを伝えています。

一方、マヌングルの壺は、パラワン島で発見された埋葬用の土器です。
紀元前890〜710年頃のものとされ、蓋の上には小舟に乗った人物が表されています。これは、死者の魂が別の世界へ向かう姿を表しているともいわれます。

この2つを見ると、フィリピンのアートの出発点が、「美しいものを作ること」だけではなかったとわかります。

フィリピンは、たくさんの島からなる国です。
地域ごとに言語や文化、信仰、暮らし方が違います。

スペインが来る前から、各地にはそれぞれの共同体があり、海を通じた交易も行われていました。中国、東南アジア、イスラム文化圏とのつながりもありました。
島ごと、地域ごとに違う文化があり、それぞれが外の世界ともつながっていたのです。

この「ひとつではない」という感覚は、フィリピンアートを見るうえでとても大切です。

16世紀以降、スペインの植民地となりました。
この時代、カトリックが広がり、教会、聖像、宗教画などが多く作られるようになります。

今でも街を歩くと、教会や宗教行事が生活の中に深く根づいていることがわかります。
その背景には、長いスペイン植民地時代があります。

そして、スペインの影響だけでなく、中国系職人などの他のアジア技術などが混ざりあいます。

19世紀になると、植民地支配への疑問や、改革を求める意識が高まっていきます。

美術の世界でも、重要な画家たちが登場しました。
フアン・ルナフェリックス・レスレクシオン・イダルゴです。

二人はヨーロッパで学び、国際的な美術展で評価されました。
特にフアン・ルナ《スポリアリウム》は、フィリピン美術史を語るうえで欠かせない作品です。

《スポリアリウム》は、古代ローマの闘技場で命を落とした剣闘士たちの姿を描いた大作です。この作品は、植民地支配の中で苦しむフィリピンの姿と重ねて見られることがあります。

ここで美術は、ただ美しいものを描くだけではなくなっていきます。
存在、誇り、苦しみ、そして「自分たちは誰なのか」という問いと結びついていきました。

美術は、社会や歴史を映すものになっていったのです。

20世紀前半に人気を集めた画家のひとりが、フェルナンド・アモルソロです。
彼は、明るい田園風景や、光の中にいるフィリピンの人々を美しく描きました。そこには、理想化されたフィリピンの姿があります。

一方で、ヴィクトリオ・エダデスは、フィリピン美術にモダニズムをもたらした人物として知られています。彼は、整った美しさよりも、大胆な筆づかいとともに、労働者や都市の現実を描きました。


つまり、この時代のフィリピンアートには、2つの表情がありました。

理想化された美しいフィリピン。
そして、近代化の中で変わっていく現実のフィリピン。

この対比は、今のフィリピン現代アートにもつながっています。

第二次世界大戦後の1946年、フィリピンは独立します。
けれども、独立はすべての問題が解決したという意味ではありませんでした。

戦後には、復興、貧困、政治、社会の不平等など、さまざまな課題が残りました。

この時代のアーティストたちは、そうした社会の中で「フィリピンらしい表現とは何か」を探していきます。H. R. オカンポのような抽象画家や、ナポレオン・アブエヴァのような彫刻家は、西洋から学んだ表現を取り入れながらも、独自の感覚を探りました。

1970年代から1980年代にかけて、国民たちはマルコス政権下の強い政治的抑圧を受けました。

この時代、アートは社会に対するメッセージを持つようになります。
貧困、不平等、暴力、抑圧、人々の苦しみや希望を表現する作品が生まれました。

この流れは、社会派リアリズムと呼ばれます。

社会派リアリズムの作品は、ただ「きれい」なものではありません。見る人に考えさせたり、胸に重さを残したりすることがあります。

明るさだけではなく、痛みも描く。美しさの奥に、社会へのまなざしがある。

そこに、フィリピン現代アートの深さがあります。

このようなアートの多層性について考えていると、フィリピンでお食事のことを思い出します。

「フィリピン料理って、どんな料理?向こうではどんなものを食べているの?」と知りあった人に聞かれると、いつもうまく答えられずにいました。
アメリカ料理のように感じるものもあれば、スペイン料理や地中海料理に近いものもあります。イタリア料理、韓国や中華系の料理も好まれ、地域や家庭によって味も大きく違います。インターネットで"フィリピン料理"で検索して出てくる料理は、都会ではあまり見かけないように思います。

最近になって、いちばん適切な答えは「フュージョン料理」なのかもしれないと思うようになりました。

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いくつもの歴史や記憶が重なり合うことで、独自の表情が生まれていること。

フィリピンアートは、簡潔な言葉で説明できるものではありません。
けれど、その説明しきれなさこそが、フィリピンアートの面白さなのだと思います。

※今回の記事は、フィリピンの歴史に関する記述について、特にこちらの本も参考にさせていただきました!

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